思わず女将さんを呼びつけそうになった左之を皆で取り押さえると、六人で丸く円陣を組んでコソコソと密談を始めた。


「何だよ、何で止めんだよ!」


「甘味処に酒がある訳無いだろう」


「現に甘酒があったじゃねえか」


「あれは甘酒ではない」


「いいや、甘酒だぜ」


「ならばお前の言う通り甘酒でいいだろう。それで万事解決、問題は無い」


「おう!……あれ?」


一くんに言いくるめられた左之は、納得していない微妙な表情になり「まあいいか」と考えることを止めてしまったようだ。流石、一くん。沖田はしみじみと感動した。


肩をトントンと叩かれ、振り返ってみれば、平助が悄然とした表情でうなだれていた。不思議に思って見つめていると、彼は眉を下げてため息を吐く。


「総司に元気を出してほしくて、甘味処に連れてきたんだけど……やっぱり力になれなかったみたいだ」


「ああ、成る程」


彼の気遣いが嬉しくて、沖田は心から満面の笑みを浮かべた。そう言えば、自分は悩んでいたのだ。そのことを今では遠い昔のように感じる。


「楽しかったです!
また、一緒に連れて行って下さいね!」


「本当か!? 元気出て良かったぜ!」


嘘偽りの無い本心である。久しぶりに心が躍るほど楽しくて、心の中にあった錘(おもり)が取り払われたように感じた。


平助は勿論、左之や山崎さんに光さん、一くんまでが笑っている。芹沢さん以上に、失いたくない命たちが、いつの間にか沖田の周りには増えていた。


ずっと、仲間と共に生きたい。


心の闇を照らしてくれた仲間の為に。


「このお団子、とっても美味しいです!」


死に瞼を閉じる瞬間まで、
仲間の為に命を燃やしたいと思った。