僕の十余年における人生において、歴史的敗北を喫した悔しさの余り、二人の桃色な様子(沖田目線)から灰色に燃え尽きる決定的な痛手を被っていたとき。





「ぐっ……オ゛エェエェェ゛……!
ゴホッ……ん゛ッ……!」





苦悶の声と共に、盛大に口内の甘酒を吐き出した左之は、自分の胸をドンドンと叩き、他の四人に血走った目を向けてきた。


正面に座っていた一くんは、寸前で左之の吐瀉物と事故を起こしそうになり、青ざめた(よりもむしろ白い)表情で口元を抑える。


平助は完全に引いていた。


「んー!」


目を白黒させながら叫ぶ左之は、どうやら何かが言いたいようだった。一くん以外の一同は、左之の言葉を解読しようと耳を傾ける。


「ん゛ん゛ん゛!」


「おんな?」


試しに沖田が左之らしい単語を言ってみれば、左之からは今にも射殺さんばかりの視線を向けられてしまった。


「ん゛ー! ん゛ん゛ん゛!」


「……ほら、左之」


平助がそっと手渡したのは、いつの間に貰ってきたのだろうか、一杯のお冷やだった。左之は奪うようにそれを取ると、あっという間に流し込むようにして飲む。


(……ああ、“お冷や”ね)


どうやら左之は甘酒を飲んでいる途中、喉に詰まったらしい。やはり左之はどこか抜けていると感じた。甘酒を飲むときに噛まずに飲――……。



あれ。


……甘酒って噛むものでしたっけ?



「やけに甘えと思ったら麹(こうじ)の入ってるただの汁粉じゃねえかよ、これ!
でっけえ白玉丸呑みしちまっただろ!」