──ああ、暑い。

首筋にじとりと汗が滲んでいることに気がついた。

私は閉じていた瞼を開けて窓を開ける。

ベランダに出ると、朝日はもう町全体を照らし出していた。

ソーダ水が全身にかかる。

髪の先から指の先までぷつぷつと感じる。


聞こえる、全身で。

しゅわしゅわ。


滲んだ汗を風が拭ってくれる。空は淡く青く、私は少しだけ息を吸った。

ソーダ水が私を通っていく。

泡立っている。




「……どうかしたの」

背中から静かな声が聞こえた。

振り返らない私の肩を、声の主は後ろから柔らかく抱いた。私の肩口に彼の頭が埋まる。


「隣に居なかったから、ちょっとびっくりした」

肩からくぐもった声が聞こえた。

その声が世界に流れて響いて、弾けて泡になり私に降り注ぐ。


ぷつぷつ、しゅわしゅわ。


ああもう、やだな。

こんなソーダ水、早く飲み干しちゃいたいのに。