「悲しいの? うん、そっか、うん。もう大丈夫だから。僕? 元気だよ。うん、どこにも行かないよ」

大丈夫、とおまじないのように唱えてあげている内に彼女はすこしずつ落ち着いていった。泣き声がようやく止んだと思ったら、彼女は次にこんなリクエストをした。

私が眠るまで声を聞かせてほしい、と。

彼女から必要とされるのは嬉しいけれど、声を出し続けるって一体何を話し続ければいいのやら。


「何でもいいの? あ、そう。んーじゃあ、昔話でいい?」

彼女がか細い声で了承の返事をする。


「先に言っておくけど、つまんないからね。え、そう? じゃあまあ気負いなく」

つまらない方がいいってどういうことだ。