僕は何気なく店内に目をやった。最初の薄暗さに慣れてしまえば、中はそれほど暗いというわけではないことに気が付いた。
確かに壁には窓がひとつも無かったけれど、その代わりに天井に窓が設置されていた。正方形の小さな天窓が数個、等間隔に並べてられていて、店内に光の筋を作っていた。その光が舞い上がる埃に反射してちらちらと空間を照らしている。
天井からの陽光が照明になって、薄暗い店内から商品を浮かび上がらせている。テーブルや細長い棚に無造作に置かれた骨董品はまるで深い眠りの中にいるようで、何百年も前からそこに存在しているような風格さえ感じさせた。
目を凝らして見ないとわからないほど細かな絵が描かれた壷や鮮やかな色塗りの皿、もう音も鳴らなそうなオルゴール、一体どんな鍵穴に入るのだろうと訝ってしまう複雑すぎる形をした鍵、忘れられた傘のように立てかけられた日本刀、溜め息が出るほど美しいペガサスの彫刻、今にも動き出しそうに目を血走らせた大鷲の剥製。
まったく統一性のない商品たちは、ただ静かに、ここが自分の居場所だとでも言うようにそれぞれが堂々と鎮座していた。
一見乱雑でガラクタまみれに見える埃っぽい店内に、不思議な存在感を放つ骨董品たちが所狭しと並んでいた。


