それから数日後のある日の休日、彼女は僕と連れ立って例の骨董品屋を訪ねた。
木目の入った濃い茶色の扉には「営業中」の札が掛かってはいたけれど、本当に営業をしているのか疑わしい店構えだった。
通りに沿った壁には窓がひとつも付いていないし、看板も何も出ていない。営業中の札の横に小さく、表札のように「骨董品屋」と書かれた札が掛かっているだけだった。
扉を前に躊躇う僕を余所に、彼女は躊躇いもなく意気揚々と店の中に乗り込んでいった。
チリンチリン、と扉に取り付けられたベルが小さく鳴いた。
彼女の後ろに続いて店に入った僕は思わず目を細めた。陽の光が燦々と降り注いでいた表の通りとは打って変わって、店の中は夕方のように薄暗かった。しばらくして目が慣れるまで、僕は店内がほとんど見えなかった。
目が慣れるまで、前を歩く彼女が着ている桜色のカーディガンだけを頼りに店内を進んだ。あちこちに埃の匂いが充満している。歩くたびに板張りの床が微かに軋んで音を立てた。
「ごめんください」
不意に彼女が大きな声を出した。薄暗さに慣れてきた目を彼女の視線の先に向ける。
いつの間にか店の最奥まで入り込んでいたようだった。入り口の扉と丁度対角線の位置に小さな机が置かれ、その上に精算用らしいお金が入った木箱があった。
その机の奥に開け放たれた扉があり、さらに奥から「はい……」という低い声が聞こえてきた。とてもしわがれた、聞き取りにくいくぐもった声だった。


