「なんでだよ。虹の向こう側に住んでいる魔女に、赤い木の実を渡して、願い事を叶えてもらうんだろ」
カインに冷静に返されて照れくさくなったオレは
ボソボソと口の中で呟くと、コーヒーにミルクをたっぷり入れて
スプーンでカチャカチャと、わざと大きく音を立てた。
すぐに崩れる、白い螺旋。
「なに言ってるんですかレントさん。ボクが育ったリトルガーデンでは、虹の向こう側の国には悪い魔女がいて、願い事につられて階段を渡ってきた子供の心臓を集めてるって、そう聞きましたよ?虹の出た日は出歩いちゃダメよって、いっつもシスターから注意されてましたもん」
と、言って、女のようにきれいな顔を歪めるカイン。
そう、リルカはメンクイだったのだ。
小さい頃は兄さん兄さんで、それはそれは可愛かったのに。
・・・いや、色白で目も大きくて、今でもリルカは、それはたいそう可愛いけれど。


