廻音

姉と黒雅さん、二人の為だから、と例えどんな理由であれ彼女が堪えられるとは思えない。
中途半端に真実を知る必要はないと思った。
今はまだ何も知らない方が懸命だろう。

思考を廻らせるうちに何時の間にかシャットダウンされていた聴覚が、戯れ合う子供達の声によって急激に引き戻された。
ほとんど靴の先を見て歩いて来たから、もう此処まで辿り着いたのだと驚かせられる。

「光陽公園」
己の名を誇らしげに語る木製の看板が心臓を動揺させた。

今此処でこの入口に「アンタは立入禁止。」と言い放たれたなら、喜んで退散するかもしれない。

しかし、そう上手くいく筈もないか、と我が身を奮い立たせ、しっかりと前を見据えた。