室内に入るなり「そう言えば、コレ。」と、たった今の出来事をすっかり忘れた様に白い封筒に入った一通の手紙を手渡された。

「男が訪ねて来た。コレを君にって。
あんな男の知り合いが居たなんてね。」

難しい顔をした來玖さんをチラリと見やり、封筒を裏返す。
丁寧に並べられた文字。

分かりやすく、深く溜め息を吐く。
あぁ、こういう事って重なるように出来ているんだなって実感した。
來玖さんにお願いせずとも酔いは綺麗に吹っ飛んだ。

「…目的は私じゃないわ。
あなたも知っている筈よ。
黒雅さん。黒雅 夜さん。お姉ちゃんの元交際相手。」

「元、交際相手、ねぇ。」と來玖さんは「元」にアクセントを置いた。

「元でも何でも私はどっちだって構わないんだけど。
本当に…急に、何故?」

深く考えてはみても、封筒の中身を知る術はない。
答えは全て姉に託されている。