帰り着いた部屋の中で電気も点けないで、二つの影だけが揺れる。

静寂の中で、リズミカルに吐息だけが漏れている。
感嘆の声か、反動による義務的な喘ぎか、どちらともつかない卑猥が鼓膜を支配する。

「いつ何があったって廻音は俺のモノだ。
廻音が忘れてしまわないように、害虫がつかないように証を…。」

呪文の様に肌に言葉を落としながら一つ一つマーキングをされる。

何があっても忘れたりしない。
誓って、無いと、「いつかの回想」の中で彼を想う。

彼の肌にキリッと痕を残す。

左手の人差し指の爪が、視界の隅で揺れていた。