そう言って頭を下げる彼には流石に面食らった。

まさかこの人がこんな事するなんて、と異常事態には動揺してしまう。

「顔…上げてください。そんな姿、あなたには似合いません。」

口からは、素直な言葉が飛び出していた。

「似合わない?」

顔を上げた黒雅さんは、不思議そうな顔をしていた。

「似合いませんよ。本当に似合いません。
私が勝手に決め付けた、勝手なイメージだって怒ってもいいですよ。

でも、あなたに関わったほんの少しの時間の中で、私が識っている黒雅 夜は、もっと強い人です。

大切な人だから悩むのは解ります。弱気になるのも解ります。
それでももっと胸を張ってください!
姉は今でもずっとあなただけを待っています。ずっと、あなただけに恋をしたままなんですよ!」

自分でも驚く程の声量に気付いた時には、彼の顔にはもう、不安の色は残っていなかった。

姉が愛した、そして私だって憧れた、美しい笑顔がそこには在った。