「なんで、僕なんかに……」
優しくするんだろう――
もしかしたら、またあの日の惨事が起きるかも知れないと危惧してながらも、『まだ大丈夫』と杞憂にする自身を渉は疎みさえもした。
でも、離れられない。近づかなくても、あちらから近づいてくれる。
『拒否しろよ、手離せよ。お前ら全員嫌いだ、バーカ。とでも言えば、人間関係なんて破綻だぜぇ』
掠れた笑い声を交えて、周りを増やした渉にそう言った小悪党。
皆まで言うなと言いたい。それができたらどんなに楽か。
生きている心地がしない、と他人から言われた――人間味がない渉でも、本当はこんなにも“人間染みていた”。
生きることを楽しみたくない、とはっきり思っても、楽しい毎日でつい霞んでしまう。


