罪語りて所在の月を見る



「なんで、僕なんかに……」


優しくするんだろう――


もしかしたら、またあの日の惨事が起きるかも知れないと危惧してながらも、『まだ大丈夫』と杞憂にする自身を渉は疎みさえもした。


でも、離れられない。近づかなくても、あちらから近づいてくれる。


『拒否しろよ、手離せよ。お前ら全員嫌いだ、バーカ。とでも言えば、人間関係なんて破綻だぜぇ』


掠れた笑い声を交えて、周りを増やした渉にそう言った小悪党。


皆まで言うなと言いたい。それができたらどんなに楽か。


生きている心地がしない、と他人から言われた――人間味がない渉でも、本当はこんなにも“人間染みていた”。


生きることを楽しみたくない、とはっきり思っても、楽しい毎日でつい霞んでしまう。