「なんだろう。『コタツじゃ風邪引くから、布団で寝なさい』って聞こえてくる」
「どんな脳内補完だ。めでてぇ耳だな。そんなこと言うのは俺の奥さまぐれえだろ」
「藤馬さんは言われたことあるんですか」
「言われてえぇっ」
優しくされたことはないらしい藤馬が、渉の体を引きずり寝室まで連れていく。
六畳間の家具がない畳部屋。真ん中には布団があり、藤馬はゴミ捨てのように渉を布団へ投げた。
痛いということはない、痛くはならない体で渉は寝返りを打って。
「おやすみなさい、藤馬さん」
期待を込めてその言葉を口ずさんだのを藤馬は知っていたからこそ、あえて『おやすみ』と返さなかった。


