「襖です」
「ちげえよ、バーカ。今じゃなくて最近だ。最近見たとき、どんなだったんだ」
「……」
思い返したのは二日前の深夜だ。
トイレに起きて、廊下を渡るとき、黒くて長いモノを見た。
「輪郭はない影です。足と手みたいな“伸び”はありましたが、僕はそれ以上、“理解しません”から」
「ふうん。まあ、順調に育っているわな」
くだらなげに藤馬が襖から目を離した。それと同時に。
ぎしぃ、ぎしぃ。
と、“重い何か”が廊下を歩く音が聞こえてきた。
寒気立つような鈍い音でも、慣れすぎて立つ鳥肌もなくなったと渉は気にせず、前を向いた。
依然として寝そべったままだが、顔だけは上げておく。下げればまた藤馬に顎を持たれると思ったから。


