声をかけられた伯母はさぞや渉が憎かろうに。
渉が何を話しているか分からずも、のうのうと“人らしく話しかけたこと”に伯母は呪言をあげていたのかもしれない。
『もう、私は人ではない』と、狂った自我で怒りを現し、渉に訴えかけていた。
――許さない。
「水をかけます、み、みず、みずかけ……あ゛ひゃひゃひゃひゃ、水をかけます、水をかけます、水を水ををあひゃあぁあ゛!」
その言葉が何よりも伯母の怒りを物語っていた。
水をかけます。
それを渉が嫌がると知っていて、“それだけは忘れてなるものか”と執念で覚えていた、渉の凍てついた記憶を掘り起こす、きっかけ。
もっと嫌がれ、もっと苦しめ、私はずっと忘れない、と伯母の唯一の人間味は憎悪の形として残っていた。


