面倒なことになる前に、と渉は背中から語った。
「ま、待ってえな、わたるんはん」
やっと落ち着きが取り戻せた秋月が渉を止める。
それでもなお、渉はひたすらに無視をするので腕を掴んで止めてみせた。
「なんで、あんさんは……」
「――、それは“どの意味”での質問ですか」
振り向いた渉はゾッとするほどに無表情だった。
秋月の掴む手を払い、感情を無くしたかのような機械的な抑揚ない声で渉は続ける。
「スパナが僕に当たらず、あの人に当たったことか。このことに関して僕は普通でいられることか。頭が“ぱっくり”割れた人を見ても平静でいられることに対してか。
全部が全部、僕にとっては“想定の範囲内”ということなんですよ。
予想していたからこそ、対処法も対策も立てられました。第一、こんなこと僕にとっては“当たり前だった”。
もう小さいとき以来で忘れそうにもなりましたが、忘れてはなかった。僕は周りを巻き込めるにおいて、最悪な人間です」


