ざわっとどよめくような、いきなりのことに動揺する阿行たちの中、渉だけは平静に、“逆に冷静になれて”、最初にしたことはケータイを取り出すことだった。
ある番号にかけて、ワンコールで出た相手に。
「救急車をお願いします。チンピラたちが廃工場内で何人か倒れてまして。はい、一人は頭から血を流して重傷みたいなので、すぐに来てください。場所は――」
淡々と述べた渉が、通話を終えて、ケータイをしまうなり、移動した。
阿行を通り過ぎ、冬月たちをも、まるでいないかのように見向きもせず。
「皆さんも早くここからいなくなった方がいい。事がことです、もしかしたら、あの重傷患者は『チンピラ同士のいざこざ』でまとめられないかもしれませんし。
余計なことを聞かれる前に、この場は立ち去ったほうがいいですよ」


