「阿行さん、バランス崩れますから乗り出さないでください」
男子たちが夢見て先のように叫ぶであろうと再現したことを、渉は見事に触れもしなかった。
男子としてどうなんだ、それ。と言いたいところだが、見逃してはならない。
「わたるんー、顔赤いよー。ユッケ食べたの?」
「いつのネタですか、それ。しかもか食中毒で顔は赤くなりませんよ」
逆に青くなるだろうと、阿行のヘブンズオパーイが離れた帽子を被り直した渉。阿行の言うとおり、ほんのりと赤いような。やはり慣れてもうぶなよう、所詮はどうて――いやいや、渉は誠実なだけだった。
もうこっちの窓はいいだろうと、渉が隣の窓に移る。手を伸ばそうとしたとき、どこからか茶化すような口笛が聞こえた。


