と言いながら、気まずそうに顔を上げた桐原さんは、相当強く顔を机に打ちつけたようで、鼻の頭が真っ赤になっていた。



「去年、一緒に服買いに行ってもらったじゃないですか」

「うん」

「あの時俺『経費で落ちるから』って言ったじゃないすか」

「うんうん」

「あれ……嘘です」

「――う、嘘?!なんでそんなついてもしょうがない嘘をついてたのよ?」


勢いよくまくしたてる私に、桐原さんは椅子ごと後ろに下がった。


「だってそうでも言わないと、金に糸目を付けて思い切った買い物ができないじゃないですか」

「で、どうしたのよ、そのお金は」

「……カードの……12回払いで……その」


気まずそうに目を反らす桐原さん。


「でもこのところずーっと忙しくて、レギュラーだって持ってるんだから、それ相応のお金、もらってるんじゃないですか?」

と問いただすと、


「俺まだ準所属だから、ランクが最低なんすよ」



声フェチとしてまったく勉強不足だったが、声優はランクで給与が決まる。