「椿さん、彼女は使用人ではないわ。隼斗の婚約者の園宮ゆのさんよ。」
「婚約者!?」
「これからは、会う機会も増えると思うから…宜しくお願いしますね?」
「おぅ、これはこれは初めまして。華道家の桐島です。隼斗くんも、とうとう結婚かぁ。新年早々おめでたい話題で何より。それでは…」
会釈して桐島夫婦は奥の茶室へと。
「あの…本当ですか?」
桐島の娘は呆然と立ち尽くして…。
「えぇ。もう、すでにうちに住んでるのよ。ねぇ、ゆのちゃん?」
「えっ……はい……」
私は“婚約者”という言葉で固まってしまった。
「もしかして、その帯留め…」
「えっ?」
私は指差された帯留めに触れた。
「椿さんご存知なの?この帯留めは、代々家元の妻に受け継がれるもの。私がゆのちゃんに差し上げたのよ。」
「……そんな……」
「ほら、椿。家元がお待ちかねだ。早くしなさい。」
先に歩いて行った両親に促され、彼女はその場を去った。