「じゃあ、早速着付けて、立ち振る舞いを覚えて貰おうかしら?」
「あっ、はい!宜しくお願いします。」
私は着物を着付けて貰い、夕食までの間、お辞儀や歩き方などを教わっていた。
「母さん、食事の用意が……」
襖を開け、声を掛けて来た隼斗さん。
私を見て、黙ってしまった。
「母さん!!何してんだよ!?」
「あら、見ての通り立ち振る舞いを教えてるのよ?」
「そういう問題じゃなくて…」
「そういう隼斗こそ、稽古の邪魔しないでくれる?ねぇ、ゆのちゃん?」
「えっ?あっ……あの……」
「隼斗、誤解してるみたいだけど、ゆのちゃんが習いたいって言ったから、教えてるのよ?ねぇ?」
「はい!!私がお母様にお願いしました。いけなかったでしょうか?」
「あっ…いや。ゆのが言ったんだったら…いいが…。けど、母さん。無理強いはヤメろよな?」
「はいはい。もちろん、無理強いはしませんよ」
隼斗さんは“はぁ…”と大きなため息をついている。