……でも、まさかね。絶対に彼なんかじゃない。

彼が同じ高校にいたとしたら、今まで気付かないはずがないもん。

私はずっと、彼を探していたんだから。


「他人の空似ってやつだよね……」

「ねぇ〜瑛菜! 選択何にするー?」


私の小さな呟きは、右隣の席の友達、凛(リン)によってかき消された。

振り向くと、頭に大きめのお団子を作った凛が何やらプリントをヒラヒラさせている。


「え……あぁ、選択?」


そういえば二年から選択授業が始まるんだっけ。

私はいつの間にか配られていたプリントに目を落とす。

そこに記されているのは芸術科目の選択。

音楽、美術、書道の中から選ぶことになるから、春休み中に決めておけって言われていたっけ。


「私は……美術にするかな」


もともと絵を書いたりするのは好きだったから、この中から選ぶならすぐに決まった。

すると、凛はニッと笑ってペンを持つ。


「じゃーあたしも美術にしよ! 決定〜♪」

「え、書道じゃなくていーの? 凛上手いのに」

「書道はじーちゃんが教えてくれるからいいよ。てゆーか、別に今更習いたくもないし」