しばらくその瞳に私の瞳が盗まれるんじゃないかと思うくらいに、





ジっと・・・見ていた。






瞳から目を逸らすのが何故か惜しい感じがして。





するとコツコツと革靴の音をならして遠くにいた、





彼が私の目の前までやってきた。





切れ長で・・・





この瞳、素敵だな。





直感的にそう感じた。





すると彼は唇を開いた。





その動きさえもスローモーションに見えるくらい、

彼の動きは滑らかだ。





「・・・木崎旬。服飾科。18。」




彼はそれだけ言うとはーっと怠そうに息を吐く。





そして私にズイっと近づいた。





その近づいた顔の美しさに胸がときめいた。





何でこの集団は女の子が羨むくらいに顔が綺麗にできてるんだろう。





「俺達のモデルにしてやる。」





私が木崎旬の顔に見とれていると、


木崎旬は1mm足りとも顔の表情を緩めずにそう言った。





しばらく時が止まったみたいにそのままの状態だった。





私はなんとか頭の回転を働かせる。





モデルに、してやる?





その台詞が頭にリピートされた。





そしてひっかかる。





上から目線発言。





“してやる"って?





何ですか、
その上から目線発言は。





だけど冷静に自分を抑える。





初対面の人に、

そんな近所のおばさんみたいに



“言葉遣いに注意しなさい"





なんて言えない。





心の中で深呼吸して言葉を切り出す。





「少し考えさせて下さい。


1週間以内に決めますので。」





私は得意のモデルスマイルを繰り出す。





すると彼は近づいていた顔を離した。





そして彼はプイっとそっぽを向いて呟く。





「俺達のモデルにしてやるっつってんだから感謝しろっつーの。」





随分と小声で言ったみたいだが私にはそれがハッキリと聞こえていた。





ムカッ・・・。





怒りが心のダムから溢れ出す10秒前。





何か格下に見られてるんですけど。





これでもモデル科一位なんですけど。





皆頼んで私をチームのモデルにしたがるんですけど!?





修達はオロオロとし始めた。





隠してるつもりだった、


が、




怒りの表情に浮かびあがってしまったみたいだ。





私はしまった、




と一旦俯き、
無理矢理笑顔を作って顔を上げた。





さっきの呟きは聞こえていないフリだ。





「今度作業室に伺いたいので場所をお伺いしてもよろしいですか?」





モデル科で習ったマナーを駆使してそう要路に言う。





校内には作業をする作業室があり、


それは放課後借りられて、


コンテスト前などはそこで作業する。





急に話を振られて驚いたのか要路は一回話が詰まった。





「あ、俺達の作業室は校外なんだ。

住所書いておくよ。」





彼はそう言ってバックから紙とペンを出してきた。





こ、校外?





そんなチームもあるのか。





どこかに部屋を借りていたりするのかな?





要路に住所を書いた紙を貰うと、


要路達は手を振って去って行った。





たった一人、木崎旬は手を振らなかったが。