顔の向きを変えられ、その瞬間に目に入ってきたのは、





茶髪の人の整った顔立ち。





さっきっからヘラヘラしてるイメージしかなかったのに・・・、



今は真剣な顔をしてる。





ドキっ・・・。





思わず胸に衝撃が走る。





私は今、


茶髪男子に顔を触られてる・・・





いや、向かされてる状況か?





ほんと、整った顔してる。





なんで男なのにこんなに肌がきめ細やかで、真っ白なんだろ・・・。





男の人の顔を初めて美しいと思った。





羨ましいな。





喉がゴクリと動くのが感じとれた。





そして彼の唇が動いた。





「ほんと、キレーな顔。」





ニコリと笑みを零した。





思わず胸が跳ねた。





さっきまでの軽い笑顔、

ただ笑ってるという感じはなかった。





すると彼は私を割れ物を扱うかのように、

私に触れていた手を離した。





そしてまた私の瞳を捕らた。





ジッ・・・とまだ見つめて来る。





何があるのかと思い、


私も彼の瞳をつかみ取るように見つめる。





な、に?





私は頭を捻る。





すると彼はさっきの微笑みとは打って変わってニカっとを歯を見せて笑った。





そしてまた口を開く。





「ほんと、化粧のり良さそーだな。


特に唇の形が好きだ。


キスしたくなる。」





そう言うと、
彼は人差し指を私の唇にあててきた。





咄嗟に顔をバッと、
後ろに反らすように避ける。





は・・・?・・・い?





キス・・・!?





カアアっと体中の熱が顔一点に集まる感じがした。





「顔赤ー。


キミ可愛いね?」





そう言ってまたヘラヘラしてる茶髪男子。





チャラ・・・!





もういつまでも黙ってはいられない!





そう決心して口を開いた。





「あの、
あなた達のお名前を伺ってないのですが・・・。



どちら様でしょうか。」





私は今だ座ったまま、

立ったまま私を見下ろす彼等を見上げた。





「あっ」


するとヨウジという人が閃いたような表情を浮かべた。





そして彼特有の柔らかな微笑みを私に向けて喋り出す。





「すっかり忘れていた。申し訳ない。


俺は沢田要路といいます。
要路って呼んで。


ネイル科。今年で18歳。


よろしくね。」





彼はそう言い終えると私に握手を求めているのか片手を出してきた。





はぁ、

と私は曖昧な返事をしつつも片手をだす。





その瞬間にギュウっと手を握られ、
力強い握手をされた。





手を離すと他の3人もそれぞれに自分の名前を言っていく。





「俺は谷崎郁斗。メイク科でーすっ。


俺も同じく今年で18!


呼び捨てでいいから。よろしくーっ」





さっきの茶髪だ。





いきなりキスだのなんだのって・・・!




チャラ男、
とはまさにこの人だ。





そして今度はイイジマシュウが前に出る。





「俺は飯島修!ヘアーメイク科!修って呼んでな!」


そうニカっと歯を大きく見せて笑う。





歯、白いな。




そんなことがふと、脳裏に走った。





するとあと一人、


まだ自己紹介をしてない人が残った。





さっきから存在には気づいていたが、


全く喋っていないのだ。





私達の座っている席から少し離れた柱によりかかっている。






顔がよく見えない






だけど黒い髪であることはこちらからも見えた。





無造作にセットされた艶やかな黒髪。





誰だろう。





さっきからすごいオーラを感じる。





声も、聞いてない。





人と喋るのが好きではない人なのだろうか。





私は首を傾げる。





すると要路が彼の肩を小突く。





彼は要路の方に怠そうに視線を移して、柱から背中をグイと放した。





その瞬間によく目元が見えた。





黒い瞳。





すごく美しくて、

目が離せなくなった。