「よし」
そう言ってペチッと絆創膏を貼り付けた所を木崎旬が叩く。
「・・・っ、もうちょっと優しく扱ってよ・・・」
私はうえーっと自分の足元を目だけ動かして見つめる。
「わりぃ」
そう言い、
立ち上がって私の隣に腰掛けた。
少し空にオレンジ色の筋が入ってきている。
それでも外の暑さは変わらない。
だけど、
噴水からの水しぶきが体に少しかかってヒンヤリする。
「気持ちいいー」
私は後ろを向いてチャピチャピ手をいれる。
「えいっ」
振り向いた木崎旬に少し水をかけてみた。
「冷たっ・・・」
木崎旬は忌ま忌まし気にこちらを見てくる。
そして木崎旬も私に向かって水をパシャリとかけてきた。
「きゃっ」
私は目をギュっと閉じて、
水を腕でガード。
瞼を開けば、
目の前には楽しそうにニヤリと口角を吊り上げる木崎旬の姿。
「女の子の顔狙うなんてサイテー!」
「いつもお前ノーメイク派じゃねぇか。」
「そうだけど!
今もしてないけどもししてたらどうするの・・・!」
「それは・・・まぁ謝る。
けどお前はしてない気がしたんだよ。」
「理由になってない!」
私達はそんなことを言いながら、
パシャパシャお互いの手に水を掛け合う。
しばらくしてそんなバカみたいな事を止めて、
手を自分の後ろに突っ張る。
夕日を眺める、
なんてなんかくさいなー。
そんな事が脳裏に過ぎりつつ。
ある事を思い出した。
「・・・そういえば、3人は・・・?」
口に出しつつ、
それが重要な事だと段々自覚が高まる。
木崎旬が切れ長の目をまるくした。
「あ」
忘れてはいけないことを二人して忘れてしまっていた。
咄嗟にお互いにケータイを取り出す。
「「げ」」
画面に写る着信履歴と新着メールの数に度肝を抜かれた。
「お前、何件?」
「電話が32件、メール12件」
「同じく。」
そうして数秒間の沈黙が流れた。
「「・・・ふはっ・・・」」
急に笑いが込み上げる。
ハモった、
そう思ってケータイから視線を逸らし、
隣を向けば、
同じ事を考えたのか木崎旬もこっちを見ていた。
そのせいで更に笑いが込み上げる。
ハハハハッと私達の笑い声がこの本館と別館との間にこだまする。
「はっ、はは・・・!二人して忘れるかフツー・・・」
「ぷっ、だよね、しかも着信気付かないって・・・!」
壷にすっかり嵌まった私達は暫く笑っていた。
この場面のどこが面白いんだろう、
って感じだけど面白いからしょうがない。


