「あ、あれはなんと言うか・・・
その場の流れ?で・・・。
私が男達振り切るのに手こずるってたら、
要路が手引っ張って逃げてくれたの。
で、手はそのままだっただけ。」
私は二週間のあの、
ファッションショーを明けた日の事について話した。
「・・・へー」
木崎旬はそうテキトーに言った。
適当じゃなくてテキトーに。
私はどうしていいか分からなくなって、
取り合えず口を開いた。
「・・・えっと・・・」
取り合えず、
と言ってもやっぱりプランがないと喋れない。
私が俯くと、
まだ私に差し出したままの木崎旬の右手が目に入る。
私は何かの衝動にかられてその手に自分の左手を重ねた。
ギュッと力強く握ってみる。
「・・・お言葉に甘えて、
支えてくれる?」
私はそう言って恐る恐る顔を上げる。
すると木崎旬と一瞬目が合ったけどすぐに逸らされた。
何で拒否っときながら自分から繋いでるんだろう・・・。
木崎旬は呆れたかな・・・?
振り払われたらショックだな・・・。
そんな風に考えて、
胸の鼓動が早まりつつ、
木崎旬の返事を待った。
「・・・あぁ。」
するとそう言って私の手をぐいっと引っ張って私の一歩先を歩く。
よかった・・・。
私はホッとする。
手、あったかい。
ガンガンにかかってる冷房のせいで冷えた体が熱くなっていく。
後ろからみて、
木崎旬の耳が真っ赤になっているのは気のせいなのか。
それからこの、
木崎旬は一歩先を行く、
っていう距離はずっと変わらず歩き続けた。
手をかしてもらってるから、
またくじきそうになっても掬い上げてくれる。
体重を半分渡しているような感覚だから足の負担もさっきより減った。
そして座れる所・・・ということで、
本館と別館の間の建物の間にある噴水の淵に腰掛けた。
私は座るなりサンダルを脱ぐ。
噴水は結構地面から高い位置にあるから、
座ってしまうと足が着かない。
サンダルを自分の隣に置いて足をブラブラさせる。
「靴擦れ、大丈夫か?」
私の隣に座る木崎旬はチラっと私の足元を見つつ言った。
「うん、大丈夫。
でも絆創膏貼ろ。」
私は自分のバッグからポーチを取り出して絆創膏を見つけた。
「よっ・・・と」
そんなおばさんくさい声をだして自分の足を噴水の淵に上げる。
「パンツ見えっぞ。」
隣で冷ややかな声がして我にかえる。
「あ・・・、丈長いし・・・大丈夫じゃない?」
「いや、角度によっては。」
私はなんとなく周りの目が気になり始めて足を下ろした。
絆創膏はいいか。
私がポーチに絆創膏を仕舞おうとしたその時、
「かせ。」
そんな声と一緒に私の手にあった絆創膏は奪われた。
「あ」
誰にって、木崎旬に。
木崎旬は噴水の淵から下りて私の足先の前に座り込む。
「ここと、ここか・・・
うわー、痛々しい」
そんな風に言いながら靴擦れしている踵や足の側面をなぞる。
そして慣れた手つきで私に絆創膏を貼り付けた。


