「・・・っ・・・」
足が悲鳴を上げはじめている。
・・・足痛い。
ちょっとした、
ハプニングが・・・。
それに少し靴擦れも重なってる。
ブラウンの夏らしいサンダルで、
ヒールは8cmある。
まさか8cmごときで足を痛くするなんて・・・!
モデル科でもっと高い靴履いてるのに・・・!
情けない・・・。
私は我慢しつつも足を進めていた。
そうなんだけど・・・。
「っ・・・!」
足をくじいた。
グキッ、
そんな音が聞こえてきそうなくらいに無様に。
咄嗟に木崎旬の腕を両手で掴んだ。
「うおっ・・・と」
そんな私に木崎旬が足を止めた。
「どうした?」
私を腕に掴ませたまま尋ねてくる。
私はアハハと苦笑いを浮かべる。
「・・・ごめん、ちょっと足くじいちゃって・・・」
私は木崎旬の腕を杖がわりにするように、
体勢を立て直す。
「もう大丈夫」
私は笑顔を作る。
すると木崎旬はムッと顔を歪めた。
眉をひそめて、私の足元をキリッと睨んでくる。
えーと・・・
何か怒ってる・・・?
何だか心拍数が早くなってきた。
何言われる・・・?
そう私が身構えていると、
木崎旬が座り込んだ。
「・・・?」
私の足元を見ている。
「お前、嘘つくの下手。
顔、引き攣ってる。」
木崎旬はボソッと私にしか聞こえないような音量でいった。
え・・・。
どういうこと?
気づいてくれたってこと・・・?
ドキン、
胸に大きな衝撃に似た感覚が走る。
「足、靴擦れしてるし。
こんな高いの履いて来やがって・・・」
そう言うとやれやれ、
と言うように、
しゃがみ込みながら私に背を向けた。
「乗れよ。」
木崎旬は顔を少しこちらに向けて言った。
「・・・はぃ?」
私は思わず素っ頓狂なバカっぽい声が飛び出た。
「だから、おぶってやるよ。
だから座れるとこまで行くぞ」
・・・何でそんな平然と・・・。
・・・“おぶってやる"って・・・。
おんぶでしょ・・・!?
「無理無理!重いし!」
私は全力で拒否した。
「は?お前45kgだろ?
175cmあんのにそれは軽すぎだろ。
あと3kgは太れ。」
「きゃー!なんで女の子の体重普通に声にだすの!
って、なんで知ってるの!」
「ショーの服のサイズ計るとき計ったろーが。」
「もー、恥ずかしい・・・!」
「今この状況が恥ずかしいわ。」
「とにかく大丈夫!」
「大丈夫じゃねぇって。
あ。」
木崎旬は、はたと急に立ち上がる。
あ、諦めたか?
私はホッと胸を撫で下ろした。


