「あ、青?なんで?」




私はそう素っ頓狂な声がポロッと零れた。





別に嫌なわけではない。





驚いた、



ただ単純に。






昨日も何故か、





揃えたのかってくらい、皆私を青色で飾った。





私が尋ねると木崎旬は少し顔を上げてピクリと眉を吊り上げた。





そしてはぁとため息をつく。





何ですか、その呆れ顔は。





睨みつけたくなるけど、そこは抑える。






「お前は自分の姿を鏡で見たことがあるか。」






馬鹿め、





そう言わんばかりな表情を私にむける。





失礼な奴。





見たことなんて“数えきれないくらい"
なんていう比喩じゃ物足りないくらい見てきてる。






「お前にピンクや赤といった色は似合わない。

お前の雰囲気がそう物語っている。



歩き方、仕草、食事の時だっていつだって“凜"とした誰も寄せつけないような冷たい空気がお前を囲んでる。



そんな凜とした奴に甘めの可愛らしい色が似合うわけがないだろ。」





そう言ってハッと笑う。





いや、今の笑いはイラッときたよ、私。





馬鹿にしているのか。





モデル科ナメてるのか。





それに成績一位なんだよ。





どんな服だって着こなせますよ・・・!





私がイライラしていると要路が私に向かってボソリと耳打ちしてくれる。





「旬は、遠回しにキレイ系って言っているんだよ。」






と。





本当に要路は気が回る。





そう実感した瞬間だった。





「そんなに青がいいなら、どんな青がいいのよ。」





私は脚を組み直して木崎旬に問う。





「原色かダークブルー。」





木崎旬もドンっと腕を組んで答える。





「ダークブルー?そりゃねーよ夏はもうちょい爽やかにきめねーと。」





“夏なんだしライトブルーじゃね?"





そう付け足し、郁斗も真顔で木崎旬に盾突く。





ヘラヘラしてない郁斗は今初めて見たかもしれない。






「いや、これで行こう。」






一歩も譲ろうとしないで帝王のように構える木崎旬。







「せめて、ロイヤルブルー辺りでどうかな。」





要路も引かない。





そんな攻めを受けても知らん顔。





まあ服を作るのは木崎旬だから、


木崎旬のイメージ通りにやらせたいんだけど・・・





こうもなるとな。





空気がピリついてくる。





結局、
その日は作りはじめることは出来ず、

形と色を決めるだけで終わった。




なんとかロイヤルブルーを押すものの、
聞く耳を持たない木崎旬に、


“じゃあパンツスタイルで凜とした雰囲気とクールさを出せばいいんじゃないか?"





という修の提案にのり、



パンツスタイルの、メインの色はロイヤルブルー、ということに決定した。





この時ほど修に大きな感謝をしたことはない。





木崎旬も良く言えばこだわりがあっていいと思う。





悪く言えば頑固。





けど、こだわりはなくてはならない物だと思うから、
このぐらいのこだわりがあった方がこれから先に繋がるのかもしれない、





と感じないこともない。