私はその言葉に目をこれでもかと見開く。





そんな私とは裏腹に修はニコニコと頭から音符がピョンピョン飛び交っている。





グーンと体温が上がる。





失っていた言葉をなんとか探ってそのまま吐き出す。






「へ、あ、は?」





いや、そのまま吐き出せなかった。





言葉にならないまま、わけのわからない単語が宙を舞う。





もう一回言い直そう、


そう思って口を開く。






「何言って・・・「いやー、本当に美里の髪気に入ったからさッ!





24時間365日この髪を俺の側に置いておきてぇくらいッ!」





修がそう言ったかと思えば急に髪に手が触れてきた。





“何言ってんの?"






そう言おうとした言葉は修の声に被さって消え失せた。





修は顔を真っ赤にさせて興奮し、


光り物のような瞳で私の髪を恒例のように触ってくる。





私は修の言葉を頭の中でリピートする。





“美里の髪"





・・・。





一旦期待した自分が阿保みたいだ。





いや阿保で馬鹿だ。





自分が一瞬期待したのも悪いが、



“私のときめきを返して!"





そう声を大にして言えるならばそう言いたい。




減るもんじゃないけどさー・・・。




私の髪に触れる修の手が、




いつもより熱く、小刻みに震えているように感じたのは気のせいか・・・―――――





先入観って嫌だね・・・。





それからすぐに木崎旬達もやってきて、



ソファーに腰掛けてファッションショーに向けての話が始まる。





ソファーは三人掛け一つと、一人掛けが二つがある。





一人掛けには木崎旬と修。





三人掛けには私を真ん中にし、右には郁斗、左には要路といった感じ。





ソファーは三人ギリギリというわけではなく、ゆとりがあるので別に密着しているわけではない。





「・・・で、どうしたい。」





いきなり話を切り出すのは木崎旬。





ひじ掛けに左をつき、顎に手を添えている。





すると皆口々に回答していく。





「俺は、美里のこのサラッサラのツヤッツヤの髪を生かして、




何かー・・・うーん、清楚でー・・・


向日葵畑が似合う感じ・・・!?」





はいはーい、と修が手を挙げてちょっと、


いやかなり伝わりにくい比喩をする。





私、向日葵畑に似合う女になれるか・・・?





そう考えていると要路は「まあ、なんとなくわかったよ」




と修に返事をしている。





「・・・じゃ、白とかかなー、黒髪生かすなら。」





隣に座る郁斗が私の毛先をちょんと摘みながら言う。





「いや、青。青だ。コイツには青だ。」





ほんと、0.1秒もかからない速さで返して来る木崎旬。