羽美は私の声が届いたのか、驚いてハッとしたように顔を上げた。
そして私を見て、苦しい笑顔。
ズキンズキンと羽美の顔に私の心が痛くなる。
私はずくに羽美に駆け寄った。
「・・・あはは、美里、おはよー・・・
今日試験だよね、緊張するねー・・・。」
羽美は私が来た途端にベラベラと喋り出す。
・・・ドクン
ああ、きっとこの場を取り繕うとしてるんだ。
聞きたくない、言いたくない。
そう言ってるようにも見える。
でも、でもさぁ、
そんな苦しそうな顔で・・・ただその場を凌ぐために笑って。
何の答えも出ないんじゃないかな・・・、
て、私は冷静に思うよ。
だから、喋って。教えて・・・?
「・・・羽美、修学旅行の時に修に聞いたこと、
あれは嘘じゃないんだけど・・・。
それ聞いて私の事、嫌な奴だと思ったりした?」
私は羽美の話の腰を折る。
いくらタイミング見計らっても、羽美は話してくれないと思うから。
自分でタイミングをつくった。
私はじっと羽美を見る。
また、目が泳いでる。
動揺している、そんな感じだった。
すると数秒そうしてから、羽美は俯いてしまった。
ドクンドクンと私の脈から音が聞こえそうだ。
・・・わかんないよ。
そんな動作だけで、私は羽美の心の本質を見抜く事はできない。
私はキュッと結んでいた唇をほどく。
「私、言ってくれなきゃわかんない。
・・・こんなお互い何も言えないままもどかしい気持ちのまま試験受けたくないし・・・、
私また羽美と普通に喋りたいし・・・。
羽美が私と仲良くしたくないとか、
もう喋りたくないとか、
顔も見たくないんだったら無理は言わないよ?
そうならそう、違うなら違うって言ってほしい・・・。」
自分でもポンポン出てくる言葉に驚く。
ゴクン、そんな風に羽美の喉が動いたのが見えた。
私もつられて生唾を飲み込む。
そして俯いたまま、羽美は話し出す。
「・・・何が何だかわかんない。
でも何かゾワゾワして、すんごい痒くて気持ち悪いの・・・。
美里とどう話していいかわかんなかったの・・・。
ずっと喋りたいって、
普通に接したかったのに・・・。
何か勝手に目とか逸らしちゃうし・・・。
逃げて・・・。
気持ちはそうしたくないのに・・・。
そうなっちゃって・・・」
羽美の声が震えて上擦る。
私も何だか鼻の奥がツーンと痛みだす。


