そして何か言いたげに唇を小さく開く羽美。
「ぁ・・・」
羽美がか細く喉から声をあげた。
私は頷いて羽美の口から出る言葉を待つ。
更に加速する心臓。
その瞬間だった。
―――キーンコーンカーンコーン・・・。
私達の耳にそんな機会音が鳴り響いたのは。
正しくは私達の耳だけでなく、校内に居る人全員に。
私はその音で天井近くを見た。
無意識に、スピーカーがある場所に視線がいった。
あ・・・嘘・・・。
目の前の羽美が小さくともかろうじて開けていた口を結んでしまった。
・・・もう予鈴鳴ったわけ?
いや、でもまだ本鈴まで少しあるし。
続けて?、そう促そうとしたのに・・・。
「美里、早く教室入らないとねー」
羽美は安堵の息のようなものを吐き、教室に入って行ってしまった。
私はその背中を見つめた。
そして心の内で叫ぶ。
・・・なんというバッドタイミングなの・・・!?
そして、
「・・・はぁ・・・。」
ため息、ひとつ。
・・・先生来ちゃう。
私は羽美に続いて教室に入った。
絶対、次の休み時間に聞き出す。
そう決意して授業に臨んだ――――
・・・のに。
1時間の授業が終わり、私はすぐに羽美の席へと向かおうとした。
すると座っていた羽美がいきなり立ち上がって先生に一言。
「連絡した通り、今日は撮影はいってるんで早退しまーす。」
片手をあげて間延びした口調で言う羽美。
「はい、聞いていますよ。
頑張って下さいね。」
ニコリ、と美しい絵画のような微笑みを浮かべる先生。
「はーい。じゃあさよーなら。」
羽美はリュックに荷物をそそくさと詰め込んで教室を出て行ってしまった。
ポンポン進められる会話を耳にした私。
教室に一人、私。
ガクリ・・・
・・・マジか・・・。
私は近くにあった机に両手をついてうなだれた。
信じらんない・・・。
そうだよね、羽美は今や人気読者モデル。
その上修学旅行でたくさん休んでたんだから仕事もたまるだろうし・・・。
私はギュッと唇を噛み締めた。
メールしてみるか・・・。
いや、絶対誤魔化されるか返信来ないな。
・・・うん、明日、明日。
絶対に聞く。
私はそうまた一人決意して席に座った。
・・・だが、羽美は相当仕事がたまっていたみたいで次の日も来なかった。
そしてまたその次の日も。
そして土日挟んだ今日。
月曜日、試験です・・・。


