うう、髪ボサボサになる・・・。
私はキッと郁斗を睨んだ。
「・・・おー、こわ。」
ケラケラと笑い声をあげるいつもの調子の郁斗。
ああ、これならあの修学旅行の時みたいに静かな郁斗のままがよかったんだけど。
「・・・郁斗、美里の髪が崩れるだろ。」
ふわっと、私の腕を更に引き寄せながら言う。
まるで、“触るな" そう言うように。
「大丈夫か?」
要路は近い距離のまま、歩きつつ私の髪を綺麗に手ぐしで直す。
「・・・あ、ありがとう」
私はそんな要路に笑顔で返答。
要路からも天使のような笑みが返ってきて少し癒された。
すると何だか背中が痛い。
んん?
そんな風に後ろを見た。
振り返った瞬間に私の目に入る映像。
「・・・っ。」
めっちゃ旬が睨んでる。
何か、要路をすごい形相で見てる。
私は全身の毛がたつような感覚がした。
めちゃ、怖い。
私はすぐに視線を前に戻した。
・・・もう、旬の沸点が全然わかんない・・・!
勝手にキスするし、
言いかけたまま何も言わないし。
まぁ、二つ目は修のせいなんだけど・・・。
もうやだ・・・。
泣きそうになりつつも私達は学校に到着した。
授業が始まるまではいつものようにくっちゃべってばかり。
まぁ、今日喋ってるのは郁斗と要路と私だけなんだけど・・・。
そうこうしている内に羽美が登校。
羽美は俯いたまま、トボトボという効果音が似合うような歩き方。
「羽美おはよー!」
まず声をかけたのは修だ。
今までテキトーに相槌するくらいだったのに。
するとバッと顔を上げる羽美。
そして、
「お、おはよー・・・!」
戸惑ったようにそう言った。
顔は暗い、というわけでもないみたい。
片想いパワーかな、これは。
そしてそのまま喋っていると、着席時間5分前に。
「じゃ、また後でー」
そんな風に皆それぞれに言い合ってわかれた。
そして一気に人が減る私の周り。
羽美と、二人だけ。
ちらと羽美を見ると、また俯いている。


