次の日、1時間目が始まる前に勧誘して下さったチームを丁重に断りに行った。





「あ、そう。残念だなー」





最後に向かったチームの人達も苦笑いを浮かべていた。





本当にごめんなさい、と謝って、
その場を立ち去る。





「うー・・・、終わった。」





私は一つ大きく伸びをする。





疲れたー・・・。まだ学校始まってないのに。





こんな風に断りに行くのは体力的にも精神的にもこたえるのだ。





吹き抜けになっている校舎の二回で一階を見下ろすように手すりから手をダランとたらす。





そんな時だ。





「みーりっ。おはよー。」





そんな間延びした声と同時に私の腰に誰かの腕が巻き付いた。





肩には誰かの顎らしきものが。





「!?」





わわっ・・・!?




な、に!?





私は驚愕で声が出ず、ただびくりと体中を震わすことしかできなかった。





そして耳元にかかる吐息。





その瞬間に足の爪先から頭の上まで風が擦り抜けるような感覚が走る。





気持ち悪い・・・。





「なに?驚いてんの?」





サワ・・・と柔らかな髪が私の頬に触れた。





その時に見えた茶色い髪。





「・・・郁斗・・・?」





私はなんとか首を動かし、


私を後ろから抱きしめている犯人に問う。





後ろでフっと笑う声がする。





「・・・あたり。」





そう言った声が聞こえたと思えば、


次の瞬間には、腰に巻かれていた腕が解かれた。





私はすぐに振り向き郁斗と向かい合う。





「郁斗・・・今の、何。」





自分でも驚くくらいの低音が自分の声帯から搾り出された。





何でいきなり抱きしめてきたりするの・・・。





すると郁斗はニッと口角をあげた。





「おいおい、抱きしめたくらいで怒るなって。




挨拶だよ、挨拶。」





謝る気はさらさらないように、パチンとウインクをする。





ただの、チャラい奴だ。





改めて郁斗の事をそう認識した。





そうしていると遠くからコツコツといくつかの足音が向かって来る。





「おはよう、美里。郁斗。」





足音が私達の前でとまったかと思えば聞き慣れた、要路の柔らかな声。





「おう、おはよー。」





何事もなかったように郁斗は片手をあげて挨拶を返す。





そうしているうちに予鈴が校内に鳴り響いた。





「おっ、やべ、もういこーぜ。」





修がそう言うと皆各教室に向かって小走りしていった。