「てか髪どったの。」
修は私の髪をつまみあげた。
何だかそれだけでドキドキした。
触ってる・・・。
髪に神経でも通ってるみたい・・・。
「伸びてきてさー、
邪魔くさいから結んだ。」
私は眉間を狭くさせながら、自分の髪を撫でた。
「まじか。
切るなら俺に言えよ。
俺が練習したい。」
「んーいいよん。
失敗したら殴るけどー」
「恐ろしいな、おい。
ま、でも俺は失敗しないけどな。」
フフン、と鼻をならして偉そうな表情。
どや顔やめろー、
なんて肩を小突きながら私達は一緒に笑っていた。
そしてピザを一口。
おいしーい、なんて私は思わず口元が釣り上がった。
食べる事に集中し始めたからか、沈黙が少し流れた。
私は修を見る。
修はフォークで煮込み料理に入った魚をツンツンしていた。
魚嫌いなのかなー、なんていつもなら思うだろう。
けど、何かそれだけじゃない感じがして。
さっきから薄々気付いてた。
少し修の雰囲気が暗いなぁって。
「どっしたの?
何か暗くなーい?」
私はいつものトーンで修を覗き込んだ。
んー?なんて修は眉をピクっと吊り上げた。
「特にー・・・。
ないけどある。」
「あるんかい。」
「まあな」
「何があったのー?」
私は修の調子にそんな大した事じゃないんじゃないか、って思った。
「んん・・・俺今傷心期間ちゅー・・・」
修は唇を尖らせた。
質問の答えになってないし・・・。
声の調子は明るくないし・・・。
さっきまで無理してたのかな、なんて考えた。
そう考えると心臓に何かが打ち付けられたような痛みに襲われた。
「具体的に?」
私も声が落ちる。
緊張する。
けど修のことだからな。
愛着のわいていたコームが折れた、とか、
そんなことかもしれない。
・・・もしそんなことだったら殴ろう、
私はうん、と自分に言い聞かせた。
すると修の横顔で口が開くのがわかった。
「・・・羽美、誰にも言わねぇか??」
私に向かって首を動かす修。
「・・・そんな重要な出来事・・・?」
どうやらコームが折れたレベルではなさそうだった。
「・・・まあ、第三者には初めて言う・・・な。」
修の顔は真剣そのもの。


