「そろそろ戻らなきゃだねー」
私はぼうっと吐き出すように言い放つ。
「そうだなー・・・」
「何かめんどくさいねー」
「今日色んなことがあったなー」
「うん・・・。
ほんとに、ごめんね・・・」
私は俯いて膝におでこをつける。
「おいー、急にまたしおらしくなんなよ。
ちょっと明るい感じになったのに。
俺まで泣きそうだぞ、おい」
修は背中をさすってくれる。
「ごめん・・・。
ごめ、んね・・・」
グスグスと私は心の底から謝った。
「謝るくらいなら俺の気持ち受け取ってくれって。」
修はまた無理して笑ってるんだろうな。
その姿は簡単に想像できる。
「・・・それは、無理かなぁ・・・」
「超ストレート・・・!
俺結構今キタわ・・・」
ひーん、なんて泣いたフリ。
多分修は今、本当に泣きたいんだろうけど。
「私、先に戻る・・・。
一緒に帰ってきたら怪しいもんね。」
私はサッと立ち上がる。
「ああ、そうだな。
じゃあ俺は10分くらいしたら行く。」
修は私を見上げて口元の両端を吊り上げる。
私はうん、と頷いてその場を立ち去った。
階段を一段一段、ゆっくりと下る。
遠ざかり、修の姿は見えなくなるところまで来たとき。
啜り泣きのような、嗚咽の混じった声が聞こえた。
私はそれに、ただただ目をギュッとつぶっているしかなかった。
―――――――
「もー、美里どこ行ってたのー!?」
私が戻ると真っ先に羽美が頬を膨らます。
私が戻って来たのはレクの途中で、
盛り上がっている様子だったので私が遅れて来たことはばれていないと思う。
どうしよう、言った方がいいのかな・・・。
旬の言葉に傷付いて、そうしたら修が慰めてくれて、
それで・・・告白されたって。
胸がズキンと痛む。
「いやぁ、トイレ行ったら道迷っちゃって・・・。
ほんとこの学校広すぎ!」
私はヘラッと何とか笑った。
何とか、“笑えた。"
「もー、美里方向音痴ー」
私の肩をぐっと押して、不機嫌な様子を見せつつも羽美は笑ってた。
私も笑うしなかなかった。
ごめん、羽美・・・。
そう心で深く謝りながら。


