私は一通り泣いた。
涙がなくなるまで泣いた。
「・・・ごめ、修・・・ありがとう」
私はそう小さく言って修から離れようとした。
羽美の好きな人にずっと胸をかしてもらうのはかなり罪悪感を感じる。
羽美、ごめんね。
でもこれは不可抗力に近いものなの・・・。
私は心の中で羽美に念じた。
「・・・いや、このままでいさせて?
俺、お前に触れてたい・・・。」
修は今にも消えそうな声で言った。
・・・それってどういうこ・・・
「・・・ってうわぁぁぁあっ!
今のナシ、ナシな・・・!」
私が問うより先に、修は慌てふためき私からズザザザっと離れた。
私はそのスピーディーな展開に硬直した。
「・・・え、と」
私は目が泳いだ。
・・・どっちが本当の修?
どう思ってる?
抱きしめたいの?
離れたいの?
私は何とか修と目線を絡ませた。
修の取り乱しが収まるまでそう時間はかからなかった。
「・・・コホン・・・。
えと・・・やっぱ嘘。」
修は一つ咳ばらいをして真っすぐな瞳で私の瞳を捕らえた。
私は生唾を飲み込んだ。
「・・・やっぱ俺、お前に触れてぇ・・・。」
そう、掠れた声とともに私をまた抱きしめた修。
バクン、その優しい対応に何だか胸が狭くなるような感覚に襲われた。
私は何も喋らなかった。
それって、何なの?
何で私を抱きしめるの?
修・・・なりの優しさなのかな。
「俺さ・・・、さっきのバスの事。
焦った。」
修はそう言って私の肩に顔を埋めるように力を込めた。
え・・・。
焦っ・・・たの?
「郁斗が美里の事好きっつったから。
俺思ったんだよね、郁斗すげぇなって。
あんなアピールの仕方やべぇと思って。
で、俺も好きな子に振り向いてもらえるように頑張らないとな、って。」
フ・・・、そんな風に修が微笑む音がした。
私は修の言葉の中で一つひっかかった。
“好きな子に振り向いてもらえるように頑張らないとな"・・・?
な、にそれ。
「修、好きな人、 誰!?」
驚きで声が大きくなった。
授業が始まっているだろう、
誰もいない階段に私だけの声が響き渡る。
あ、と私は口を閉じた。


