そして最後。
彼等、あの4人のところに向かおう。
私は要路がくれた紙をバックからとりだす。
すごく綺麗な字。
ご丁寧に地図までつけてある。
「おお・・・」
思わず地図の出来に感嘆した。
この地図からして、学校から場所はそう遠くないようだ。
行くか。
私は紙を握りしめて、作業室に向かって足を踏み出した。
――――
数分歩いた頃。
紙にかかれた住所に一致する建物を見つけた。
・・・でも、
本当にここ?
表通りから一本中側の道に入った道にある建物。
私は何度目かわからないが、
紙と建物の住所を見直す。
・・・番地も最後の数字まで同じ。
間違いではないみたい。
・・・ここが彼等の作業室なの・・・?
こんな隠れ家的なカフェが・・・?
建物には“Trees Cafe"っとオシャレな文字。
どう見ても中で服を作ったりしているようには到底見えない。
けど間違ってないんだよね・・・。
私は半信半疑でそのカフェの扉を開いた。
その瞬間にカランコロンと鳴り響く可愛らしい鈴の音。
店内のテーブルには、二人の老人が談笑している姿。
カウンターの内側には皿を拭いている30代後半くらいの女性。
女性は鈴の音に気付いたのか私を見るとフワリと笑った。
「いらっしゃいませ。お一人ですか?」
皿をカチャンとおき、カウンターからでてくる女性。
私は小さく曖昧な返事をしながら頷く。
「どうぞ、こちらへお座り下さい。」
また笑顔を浮かべ、空いているカウンターの席を指す。
軽く会釈して私は席につく。
コーヒーのいい香りが鼻をくすぐる。
コーヒーの香りだけじゃない。
木の、自然の温かみがあるような匂いもする。
私はそんな匂いに誘われてコーヒーを注文した。
そしてすぐにコーヒーが出され、私がコーヒーの香りや味わいを堪能しているとき。
何処からか聞いた事のある声がした。
「うわぁぁああっ!
怒んなって!
悪かった!許してくれ!」
「ったくお前は学習しないねぇ?
デザインの邪魔したらキレることくらい忘れんなっつの。
めんどくせー。」
うるさい。
人が和んでる時に。
私はキッと声が漏れているカウンターのすぐ後ろのドアを睨む。
するとそんな私に気付いた女性は私を宥めるような表情で口を開いた。
「ごめんなさい、息子の友達が来ていて。」
申し訳なさそうに眉を寄せる。
そしてまた数分すると、ガチャガチャ、ドンドン、そんな音までも聞こえてきた。
その度に私は無意識に肩を揺らしてしまう。
そんな私を気遣ってか、
女性は声が漏れている扉に向かって行った。
きっとこの扉の向こうには部屋があって、
この女性の息子の友達とやらがいるのだろう。
「ちょっと、うるさすぎよ。
少し静かにしなさい!」
彼女はガツンと一言。
その声のおかげか少し騒音が静まった。
数秒すると、その扉がガチャリと開いた。
「うるせーよ、黙れ。」
扉が開いたと同時に聞いたことがあるような、
そんな声が耳を通り抜けた。


