二つの班が一課の殺人犯捜査七係の中で仲間割れしている以上、俺も声を掛ける術がない。


 それに対岸の火事だとすら思っていた。


 単に刑事部の中での騒動で、組対部には関係ない。


 俺自身、ずっと様子見しながら、何かがあるものと感じている。


 速水と越沼が対立する原因が。


 五月の半ば過ぎにフロアに詰めていると、不意に五課長の倉田が、


「安藤、何で一課の速水と越沼が仲悪いか、知ってるか?」


 と訊いてきた。


「いえ」


「死んだ長谷川さんが警部の越沼の方に期待掛けてたんだ。七年前の二〇〇五年に発生した、新宿区内のホテル一室での殺しの件で速水が捜査に失敗したことは知ってるよね?」


「はい。確か警視庁指定31×号事件で、本庁のデータベースにも載ってて見たことがあります」