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 特捜部の検事職にいる大口は、今現在入院中だが、転落死した長谷川の知り合いだ。


 検察庁でも大口はかなり腕を鳴らした敏腕検事で、入院中でも病室で新聞や専門の本などを読み、いつでも復帰できる態勢を整えている。


 昔、民自党の幹事長を務めていた議員が大口の手によって公職選挙法違反で告発されたことは実に有名な話だ。


 あの頃から政治家たちは特捜の恐ろしさに震え上がっていた。


「アイツらは国家の番犬だ。用心しろよ」と政治家たちの間では特捜の捜査の仕方の徹底振りが頻りに指摘されていたのだ。


 俺たち警視庁でも組対にいる刑事は特捜の詳しいことはほとんど知らない。


 ただ、一課や組対四課のデカたちは言っていた。


「あの人たちは目付きが違う」と。


 実際、検事でも特捜部にいる人間たちはハゲタカのように事件を追い続ける。


 同じ霞ヶ関で拠点は目と鼻の先にあるのに、ここまで違っているとなると、やはり意識はしていた。