すでに一課の速水班と越沼班は捜査に動いている。


 管理官の北山院は、各々の捜査班が勝手に動き出すのを警戒していたが、何せ長谷川の死の背後には何かが絡んでいる。


 マル暴としてずっと握っていた機密はもちろん、暴力団関係者を怒らせるだけの事実があるものと思われた。


 それぞれの班がバラバラに動いているようで、実は連携している。


 友原検視官の悠長な見立てに業を煮やした越沼は、長谷川が自殺を図ったとは考えにくいと思い、遺体の体内から薬物反応などが出てないことと、刺し傷や銃創などが出てないことを考え合わせ、転落したビルへと向かった。


 速水とはずっとライバル意識を燃やしていた。


 階級こそ一つ上で、警察社会では後輩だったとしても、事件を主導した犯人を捕まえるときはちゃんと思惑が一致している。


 四月の半ばの事件発生から、もう二週間が経っていた。


 西新宿の倉皇光社ビルの七階屋上から長谷川が落ちた、もしくは落とされた。


 普通、警察から身を引き、余生を送っている刑事が自殺などするだろうか……?