ビル内で取引を行なうのは、都内を拠点とする広域指定暴力団<河村組>とそこのフロント企業である<三嶋(みしま)興業>の人間たちの間で、だ。


 河村組のチンピラがビル内外にいて、常に見張っていた。


 ヤツらにも組対が動いているという情報が入ってきているようで、俺たちは気付かれずにじっと物陰から張り込みを続ける。


 午後十一時四十五分過ぎに、携帯している無線機が鳴り出した。


「連中は今油断してると思われる。今からすぐに突入してくれ。一気に捕まえろ」


 ――了解。


 組対五課長の倉田から伝令が来た。


 臨場していた組対四課と組対五課の人間たちに連絡し、車両を出て、ビル内へと突入する。


 ビルにはエレベーターが一台付いていて、脇には階段があった。


 組対五課の人間たちはエレベーターに乗り込み、正面から三嶋興業の関係者に接触して捕まえ、組対四課の人間たちはすぐに河村組の構成員たちを確保する手筈だ。


 どちらも油断しきっている。