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 四月半ばの西新宿の倉皇光社ビルでの長谷川勇平転落死事件は実に謎に包まれていた。


 七階建てのビル屋上から老人が転落して、死を遂げたのである。


 しかも警視庁の旧捜査四課に在籍していたマル暴だ。


 先輩刑事が死んだことが何よりも悔やまれた。


 事件性が高いとして、遺体は<東都中央監察医務院>で司法解剖が行われ、その後、都内の葬儀場で通夜と葬儀が執り行われた。


 警視庁関係者も出席する。


 長年長谷川はいろんな暴力団関係者の引き起こした事件を追い続けていた。


 旧捜査四課が組対四課に移行する前に警察社会を出た刑事で、自宅にて余生を送っていたらしい。


 おそらく遺族は悲しみに包まれているだろう。


 長谷川が自殺したとは考えにくい。


 一課のデカたちも、自殺の線だけじゃなくて、他殺の線も視野に入れていた。