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 新宿区内で河村組組長の鐘ヶ江勇次郎の愛人と目される篠原優子が発見され、任意同行されて、所轄の新宿北署で事情聴取が行なわれる手筈が整った。


 どうやら所轄のデカたちが、悪事をやらかした河村組の尻尾を掴みかけているようだ。


 鐘ヶ江が愛人の篠原と一緒に行動することが多かったことは、刑事部の人間たちから聞かされていた。


 仮に篠原が北川と組み、長谷川転落死事件で長谷川をビルから落としたとなると、共同正犯が成立する。


 道理で俺たち組対部でも四課の察しのいい人間たちが動き続けているわけだ。


 事件のあった日、ビル屋上に居合わせたのは北川と篠原であるという推測が付く。


 そして組対四課が近々河村組や大塚会の事務所を捜索し、組員たちを摘発する可能性も浮上してきた。


 そうなった場合、東京都や大阪府など首都圏が大混乱に陥ることも予想される。


 そうならないよう、事前に混乱を回避するため、警察は裏で動くつもりでいた。


 捜査線上に篠原が浮上してきたことで、鐘ヶ江や酒見など、河村組関係者は焦り始めるだろう。