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「安藤、今回のヤマは実に複雑だな」


「ええ。私もそう思います」


「何か背後に恐ろしいものが隠されてるような気がしてならない」


「恐ろしいもの……と申されますと?」


「検察だよ、検察。東京地検の大口検事だ。今、都内の病院に入院中の大口が陰で動いてるような気がしてならない」


 五課長の倉田がそう言って、フロア内のコーヒーメーカーで淹れていたコーヒーを飲みながら頷く。


 おそらく検察は、長谷川転落死事件における警察の捜査を封じ込めようとしているらしい。


 それにあの身内の不祥事も一緒に詰まった、国家を揺るがすフラッシュメモリを奪うつもりでいることも視野に入れていてよさそうだ。


 俺たち警視庁組対部もとんでもない事件に巻き込まれていそうな気がしていた。


 同じ組対部でも四課の人間たちはすでに河村組や大塚会の人間たちを取り締まるため、動き出している。