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 荒井が警視庁担当監察官として、刑事部捜査一課警視の北山院や組対部の四課長である増田、それに五課長の倉田などに聴取したことは、警視庁全体の屋台骨を揺るがす事実だった。


 公安部の課長クラスの人間たちも、現役の警視庁職員として聴取を受けたらしい。


 北山院は西新宿署内に設置された帳場における速水や越沼たちの動向や、長谷川転落死事件を追っていることを認めている。


 速水班も越沼班も必死になって捜査をしているようだ。


 現段階で一課の関係者は長谷川元警部補が自殺したとは考えていなくて、やはり自殺に見せかけた他殺だと踏んでいる。


 裏では河村組や大塚会などのヤクザが絡んでいると見ているようだ。


 俺たち組対も長谷川の死に方があまりにも不自然であることに気付いていた。


 ワープロ打ちの遺書を残した点、ビルから飛び降りるにしてはあまりにも不自然すぎる当時の周辺状況、それに第一、自殺する動機もまともにないのにビルから落ちたという点を考え合わせると、やはり自殺に見せかけた他殺と見る方が正しい。


 遺書に付着していた指紋は鑑識の鑑定結果、大塚会構成員の北川嘉美の右手親指と人差し指のものと断定されている。