当時の事件を担当した刑事の書き記した捜査報告書には<岩佐悦朗が小波一雄を殺害した可能性が極めて高く、これからの捜査では岩佐を追うのが妥当>と書かれていた。


 これは岩佐が小波殺害の実行犯であることを示唆したものだ。


 俺たち組対は冷ややかな目で見ていた。


 この警視庁指定31×号事件は殺しとはいえ、一課の継続捜査班のみで追うことは無謀だ。


 ヤクザ絡みなので、当然組対四課が動くことになる。


 岩佐と北川の関係は同じ組に在籍する者同士ということで関係が分かるのだし、河村組の鐘ヶ江や酒見などの構成員たちともつるんでいたのは事実のようだった。


 継続捜査班は岩佐を追う方向で、意見がまとまっている。


 そして組対四課のデカたちも河村組や大塚会だけでなく、巷にゴロゴロいるヤクザを追うつもりでいるようだ。


 組対四課長の増田は、謎の転落死を遂げた長谷川の追っていた鐘ヶ江や酒見を追うのと同時に、組の仕組みを全て壊すつもりでいるようだ。


 警視庁が旧捜査四課として、暴力団対策に勤しんでいた頃、鐘ヶ江と酒見は一度逮捕されたことがあって微罪ですぐに釈放された。