口角を上げて、そう言った千尋くん。 千尋くんの腕のなかから彼を見上げているあたしは、目を点にして状況を理解しようとする。 ……兄貴、熾音さんの彼女? 千尋くんが梓さんを「さん」付けで呼んでいるのは、彼女が歳上だから。 梓さんが千尋くんを可愛いと言ったり、「ちゃん」付けで呼んだりしているのは、千尋くんが彼女にとって弟みたいな存在だから。 千尋くん家のマンションに来たのは、熾音さんに会いに来たから。 本当だ……。 それなら、全部納得がいく。