「俺、お前には濃い赤が似合うと思うけどね」
「赤ですか?」
「そっ。これみたいな」

朝巻いてやった首輪の中心をグッと押すと、うっと息を詰まらせる。普通ならば非難の声が出てきそうなものだけれど、コイツは違う。ただじっと俺を見つめながら、嬉しそうにしているような女だ。

俺も大概人のことは言えないけれど、コイツも少しどこかがおかしいのではないかと思う。

「マナはどんな色が好きなんですか?」
「俺?俺はハルさん達とは真逆の趣味」
「あぁ…だからレイちゃんのお洋服はこうゆう色が多いんですね」

黒いキャミソールワンピの裾を摘み、セナはうんうんと頷いた。妹が着るとシンプルなだけのそのワンピースが、セナが着ると雰囲気がガラリと変わる。黒い髪と豊かな胸元が、幼い顔には不釣り合いなくらいの妖艶さを醸し出している。女は怖い。まさにその一言に尽きる。

「お前は淡い色が好きなわけ?」
「特に拘りは無いですけど、そんな服ばっかり着てるのでついつい目が行ってしまいますね」
「じゃあさ、今度は俺に服作らせて」
「マナにですか?いいですけど…」

俺が作るとするならば、やはり黒いワンピースだ。差し色には何を使おうか…そんなことを思いながら、腰に手を回す。

「どうしたんですか?」
「急に触りたくなった」

視線は窓の外から外さずに、さわさわと腰を撫ぜる。身を捩りながらペタリと引っ付いたセナが、うぅんと悩ましげな声を洩らした。

「もっと…」
「やめとけー?外に皆居るし」

ゆっくりと腕を引き抜き、髪を避けて右の耳たぶを甘噛みする。

カツンと歯に当たるのは、俺の左耳に着けているピアスの対の物だ。

俺は左に、セナは右に。対で着けてお互いを繋いでいる。