「ちゃんと顔見せてよ」
「…お見せする必要はありません」
「人見知り?教室に来た時はあんなに堂々としてたのに」

確かに、教室に乗り込んで来た時のセナとは大違いだ。思い出し笑いで、ふっと笑い声が洩れた。

「あっ。佐野君が笑った」

意外だーと、今度は俺が覗き込まれる番になった。どうも掴めない。不思議な女がまた増えた気がする。

「佐野君って…ロリコン?」

そんな趣味は無い。どちらかと言えば年上が好きだ。けれど、この状況ではそれも言えない。

うーんと間を空け、チラリと腕に引っ付くセナを見遣る。

「そのつもりはないけど」
「でもこの子、確かすっごい童顔だったよね?」
「かな」
「そうゆう趣味なのかと思った」

腕を組みながら、あっけらかんと言う女。あははっと軽い笑い声が、ひっきり無しに通る車の音に掻き消された。

こうゆう女は嫌いではない。何事もあっさりと済ませてくれそうだから。

「まぁいいや。また学校でね」
「おぉ」

軽く手を振り、別れを告げる。

そして思案する。
さて、コイツをどうしようか、と。