「あってたまるか」

気まずそうに視線を逸らすところからして、どうやら本気でそう思っているらしい。失礼な話だ、まったく。

「おはよう、マナ。よく眠れた?」
「おかげさまで。レイは?」
「俺達のベッドでぐっすりだよ」
「そりゃ良かった。たまにはメーシー貸してやれよ?マリー」
「…わかってるわよ」
「何なら俺が一緒に寝てやろうか?」

テーブルに手を突いて覗き込むと、ポカンと頭を殴られた。後ろから。

「俺の奥さんを誘惑しない。いくらマナだって容赦しないよ?」
「冗談だっつーの。誰が自分の母親にそんなことすんだよ」
「ははっ。それもそうだ」
「バッカじゃねーの。このマリー馬鹿」
「相変わらず悪いお口だ。大丈夫だよ、麻理子。俺達は家族だから」
「まぁ…メーシーがそう言うなら。でも!レイに変な気起こすんじゃないわよ!」
「起こしてたまるか。俺シャワー浴びてくる」

何と言ったら良いのか…呆れるくらいバカな両親だ。頭が痛くなる。

誰のせいで俺達兄妹がこうなったと思っているのだか。そう思うならば、少しくらい妹を構ってやればいいのに。

まぁ、あの二人に言ってもどうにもならないことはわかっているけれど。